大好きな声優さん


家弓家正さんが亡くなったそうです。

アニメだとナウシカのニヒル役、そして数多くの洋画吹き替えのニヒル役等々、その『日本一のニヒル声』は誰しもが一度は耳にしているはずですが、私が一番好きな家弓作品がこちら。


『ヴィスマールから何れくらい掛かったかね?』

おお!いつものニヒル声に増してグッとトーンを落としたあの闇から響いてくる様な台詞がまざまざと甦って来る様ではありませんか!

ご存知『ノスフェラトゥ』(1979年 監督:W.ヘルツォーク キャスト:クラウスキンスキー、イザベルアジャ子、ブルーノガンツ)。

過去ブログ(WEB SITE)のアーカイヴには、音楽や映画について書きなぐって来たものもかなりありますので、ここでノスも転載しておきましょう。
 


ノスフェラトゥ 
Nosferatu 

『私は昼の光は好きではない。陽に輝く泉も。あれは若者のものだ。』

『君も村人たちと同じか。狩人の勇気を持たぬ臆病者だ』

ん〜、なんと詩的なノスの台詞。 

若かりし日、まさに夜が色んなことを教えてくれた頃、永久に終わらぬ夜を生きる魔物が詩人であるとはなんて素敵なんでしょとこの作品の出会いに想ったものです。 

もちろんTV版は日本語吹き替えで、ノスキンスキーは日本一のニヒル声=家弓家正。すばらしいですね。ポポルヴーの音楽もこの映画で初めて触れましたが、ひときわ印象的だったのがグルジアの男声合唱曲。この映画を見たのと同じ頃リリースされたケイトブッシュの"Hounds of Love"にもちょうど同じ曲がヒリアードアンサンブル(たぶん)のコーラスで収録されていて、なんたるシンクロにして素敵な偶然、なんちゃって。​ 



『シンクロにして』=『シンクロニシティ』という地口ですな?こりゃマイッタ!

自分のレビューを自分で評してるなんて何言っちゃってんのチミ〜、なんて言われそうですが、書いてある内容は19、ハタチの頃に感じ入った青春の蹉跌、あいや、人生の今も先も真っ暗闇なのでは?という戦慄を覚えた貴重な体験をいい時期にしたという事を記録している訳ですからいいじゃないの。それをまた2014年にもなってちょこっと振り返って、人生たかだか数十年なんですから、3層に重なっている『感じるココロ』にもの思うってのも乙なもんで。しかも、それだけの体験をさせてくれた芳醇な文化に比して今はどうだ?といった皮肉も入れてたりするってのも、相変わらずのこんな事書いている根っこだったりして。

ところで、ノスもダーティハリーも白い家の少女も、テレビ版吹き替えの台詞をほとんど覚えているという驚愕すべき事実は、家弓さん始め、素晴らしき声優さん達の素晴らしき個性がその世界を作り上げていたからに他ありません。

しっかししかし、現在発売されているノスのソフトには、家弓さんの吹き替えが入っておりません!
数年前まで出回っていたDVDは東北新社からのもので、私の持っているレーザーディスク時代のものと基本一緒マスターなのですから仕方なしとは思っていたのですが、今は紀伊国屋書店からの立派な再発版としてブルーレイもリリースしているのにそりゃねぇべと。



ご覧下さい、このイカすジャケ。

何年か前の『シベールの日曜日』は、DVD化!というただそれだけでしばし落涙でしたが、やはり吹き替えは未収録。
結構好きなんだよなあの吹き替えも。

文化、芸術作品であるわけだから大変コレクタブルなアイテムとしてリリースしてくれるのは大賛成(思わず『沖の暗いに白帆が見える〜アレは紀州みかん舟〜』と念仏でも唱えたくなってしま、あ、その紀伊国屋とは関係なかったっけね)なのですが、やっぱり紀伊国屋さんにとって『吹き替え』は『特典』扱いレベルなのでしょうか?
テレビ局から権利取ってくるのってそんなに難しいわけではないっしょ?あれだけ他では出てるんだから。
特典でもいいから吹き替え音声収録版でおかしくない価格だしね。

好きな映画だからレンタルじゃなくって、イカすジャケとともに購入したいというごく自然な購買行動に結びついている人々とは、初めてその作品に接したのがTVにおいてであって、仕方なしにじゃなくって素晴らしき声優さん達の個性あふれる素晴らしき世界という文化がしっかり刷り込まれた世代が半分以上だと思うんだけどなぁ。

是非次は北村昌子(マリアカザレス)、津嘉山正種(ジャンマレエ) 版の『オルフェ』(今や500円DVD扱い)を!
『セジェスト返せ!』


コメント

ケムまき さんのコメント…
初めまして。

私は何年か前のヘルツォークオールナイトで初めて見ました。

アギーレから始まる野蛮なキンスキー主演作品の最後にノスフェラトゥが来て

あの世界に引き込まれながら映画を楽しみ、上映後に外に出て朝日に照らされた気持ちは吸血鬼の様な感じでした。

それにしても吹替版があったんですね…しかも家弓さん…私も大好きでした。

あの怪しさ満点の中にどこか剽軽さとお茶目さが内包してるあの演技は、決して他の役者では得難い物だと思います。

私は字幕版でしか見たことなかったので一度見てみたいんですがBS・CSでも吹替は放送されずブルーレイにもなくて悲しいです…

しかしラブとしやさんも30年程前に放送された時の台詞をよく覚えていますね。

家弓さんが喋ってるのを簡単に思い浮かべられる位です。

録画してあったならそれをぜひ大切にしてください…

では失礼します。
ラブとしや さんのコメント…
ケムまきさん、コメントありがとうございます。

なんと素敵な体験をお持ちで。私も今度明け方に観てみようと思います。ポポルヴーの音楽も非常によく合いそうですね。

その吹き替え版は当時ベータのビデオに録ってあったのですがどこへ行ったやらですので、今度本格的に捜索してみようと思います。ローラントポール(不動産屋)の西川幾雄さんの吹き替えも素晴らしいものでした。

DVDが出たての頃は、てっきりその容量とデジタルの利便性で洋画にはもれなく吹き替えがついているものと思ったのですが、電気店でデモ演されている「ダーティハリー」のどのメニューをいじっても吹き替えが見当たらず、憤慨のあまりスピーカーから流れる英語音声にかぶせて『今度は俺の200万ドルをスポーツバッグに入れて持ってこい!』とか声優さんさながらにまくし立て始め、同行者に懇願されてようやくやめた思い出もあります。

やっとDVDやブルーレイにも良い時代の吹き替え版が徐々に収録されるようになりましたが、まだまだ膨大な文化遺産が埋もれているので、なんとかしてほしいものですね。